「ありがとう」
ぽろりと零れたのは感謝の言葉。
「ん?」
何かしたか?
というような表情でこちらを見てくる彼に、なんでもないと首を振る。
そう。
なんでもない。
でも、こうやって、この場に桜井くんが来てくれたことで、心の奥がほんの少し温まったような気がした。
二人、何も話さない静かな空間なのに、彼と彼の好きな彼女のことばかり考えていた私の心に、ふっと温かな何かが灯ったような、そんな気がしたんだ。
空を見上げる。
真っ青な空は、私の心のモヤモヤを吸い込んでくれるかな。
そして、何故かすぐ傍にいる彼に話そうと思った。
なんで、こんなところにいるのか、目の前の彼には話さなきゃいけないような気がした。
彼がここにいるのは、少なからず私を探していたからだと思うから。


