もうすぐ朝イチの授業の始まりを告げるチャイムが鳴るというのに、私は、伊藤玲花に連れられて誰もいない屋上に来ていた。
泣きそうな顔をしていた彼女に、どう声をかけていいか分からず、ただ黙って立っていると、
「先輩。私ね、振られちゃいました」
ふぅっと息を吐いて空を見上げた彼女の姿を見ながら彼女の言葉を反芻した。
振られた……
振られたって、加藤に、ってことだよね?
聞きたいのに聞けない気持ちが分かっているのか、彼女は黙ったままの私に話を続けた。
「私、加藤先輩に告白したんです。でも、振られちゃいました。
まぁ、分かってたことなんですけどね」
「……」
振られると分かっていたのに告白した彼女を、凄いと思う。
私には出来ないことを、この子は簡単にやってのける。
羨ましいとさえ感じる。


