「ん?何が?」


絵里が言いたいことは、何となく分かるけれど、知らないふりをして聞いてみた。

そうしないと、胸の奥の小さな不安の塊が大きく膨らんでしまいそうだから。



「加藤、最近、モテ期だよ。モテ期」 

そう興奮気味に言う絵里に、

「だね」

とグラウンドで頑張っている彼の姿を見ながら答えた。


「ちょっ!何、その反応。人が心配してあげているのに」


そうブツブツ言われても、どうすることもできない。


確かに、今、彼はモテている。
今までも、男女問わず人気があったけれど、その人気と、少し種類が違う。

私のように、彼のことを好きだという目で見ている人が増えたのだ。