「アイツがさ『私が忘れさせてあげます』って言ったんだ。そんなこと出来っこない、無理だって言ったのに」
なのに彼女は食い下がらず一つの提案を持ちかけた。
『野球部を引退する日までだけ、傍にいさせてほしい。久保田先輩の代わりでもなんでもします。だから、それまで付き合ってください』
と。
「あの時さ、なんか、全てがどうでもよくてさ、気付いたら“あぁ”って返事してた」
悔しそうに辛そうに言った彼の告白に、どうしようもなくて、彼の手をぎゅっと握り締めた。
何もかもがうまく行かず、どうしようもなくなった時、人は、楽な方へと逃げたくなる。
それは仕方ないことなのかもしれない。
私だって、何度、目の前の優しい手を取りそうになったか。何度、どうでもいいやって諦めそうになったか。


