「えっ? 何?」
彼がここに居ることにびっくりして慌てている私を見て、可笑しそうにふふっと笑って彼は言う。
「俺さ、お節介なの」
と。
「まだ、聞いてないんだろ?返事」
それは、あの日、告白した時の彼の返事のことだろう。
あの時、逃げるようにして帰った私は、聞く勇気がなかったんだと今ならそう思える。
分かっている返事を聞く勇気がなかった。
「ちゃんとけじめつける為にも、聞くべきだろ?違う?」
「でも……」
分かってる。
桜井くんが言うことはもっともで、こんなにもまだ好きなのは、彼の口から決定的な言葉を聞いていないから。
聞かずに逃げたから。


