彼の口から、もう『あずさ』と呼ばれることはなく、『久保田』と呼ばれたことに、少しだけチクリと胸の痛みを覚えるけれど、あの頃と変わらない空気が二人の間に流れていた。



「サボり」

「ん?」

「今日、授業抜けて来てただろ」

「バレてた?」

「あぁ。お前、声でかいし」


くくくっと独特の笑いをして話す彼に、あの声が届いていたんだと分かり、嬉しいような、恥ずかしいようなくすぐったい気持ちになる。



あの時、何も考えてなかった。

何も考えず、叫んでいた。


頑張れー!って。
ただ、それだけが届くようにと声を出していた。