「何?」

どうした?今さら


そう言いたげな瞳が、ゆらりと揺れた気がしたのは、私の目に涙が溜まったからか


「……好きな子に、誤解されちゃう……」


加藤の好きなカオルさんに誤解させたくない。

好きな人から知らない女の子の名前聞くの、嫌な気になるはずだから。


「……」


黙ってる彼に、

「今日は、帰るね。じゃ」


そう言って逃げるようにして学校を後にした。

逃げるようにじゃないか。彼から逃げたんだから。







これら全部が、あの子が仕掛けた罠だったなんて、私は知らなかったんだ。


加藤から私を遠ざけるために仕掛けた罠は、あの子が思い描いたように上手くいったんだろう。