「無理にとは言わない」
無理やりは好きじゃないからと黒崎君は苦笑する。
「だけど、さっきのは本心じゃないと思ったから」
「ご、ごめんなさい…わ、私…」
気づいたら私は涙を流していた。
きっと黒崎君の優しい声のせいだ。
(泣かないって…我慢するって言ったのに…。)
「ちょっ…何で泣いて…」
黒崎君はあたふたして、私はそれが妙におかしくて涙を流すのをやめて笑ってた。
「…ふふ…あはは。黒崎君のせいじゃないよ…ちょっと目にゴミが入っただけだから」
と、誤魔化して、涙を拭きとった。
「そっか。なら良かった…」
ほっと息をつく彼。
「確かに黒崎君の言った通り本心で言ったことではないよ。歌は嫌いじゃない。寧ろ大好き」
「じゃあ…何であんなことを」
お互い真剣な顔で向き合う。
「好きだからこそ、それを私は守らなきゃいけない」
「それはどういう意味…?」
「私は…隠してるの。自分が歌を歌うことを―――」
「……」
(彼なら信じてもいいのかな…)
もし、彼にそれを言ったとして彼は周りに言いふらすだろうか。
いや、たぶん言いふらさないだろう。
私はきっとそう信じてる、信じられるからだ。
彼をすでに私は信頼している。
私を友達だと言ってくれた。
私に何の偏見も持たずに話してくれた。
(黒崎君との楽しかった…)
こんなに嬉しい気持ちになったのは初めてだった。
暗闇の道に黒崎君は私に光の道をくれた。
だからこそ、黒崎君と対等でありたい。
これからもその先もこの気持ちは変わる事はないであろう。
私は彼を信じてみよう。
「黒崎君は【星】って知ってますか?」
「知ってるもなにも、俺その人の大ファンなんだけど…」
(え…?どうしよ…すごく嬉しい。大ファンだって言ってくれた…)


