私が入った瞬間、ドアの前でも騒がしかった教室が一気にシーンと静まった。

(この空気…いつみても嫌だな…)


「ちょっと、この空気臭くない?」

と第一声に口を開いたのはこのクラスの女子のリーダーである、森さんだった。

「マジで腐るんですけどー。私たちの肌が荒れたらどうしてくれんの?」

次に言葉を吐いたのは副リーダー的な存在の橋本さんだ。


(知らないよ。どうにもできないっての。というかそんなで肌荒れてるのなら、外の空気はもっとやばいよ…あほみたい…とりあえず無視)


「無視かよー」

「うざいー、出ていけば?」

こんなのいつも言ってることだから軽くスルーしておく。

毎日よく飽きないもんかとつくづく思ってしまう。


自分の席に着き、私は1限目の授業の準備をする。


ガンっと突然、クラスメートの男子である、勝重君に机を蹴られた。

「無視すんなよ。お前見てるとこっちまでブルーな気分になんだよ。皆の前で土下座しろよ」

(ほんと…ため息つきたくなる。なんでこうも幼稚なことばかりしか言えないの?行動できないの?)

莫迦らしくて笑う気も失せる。


「聞いてんのかよ!!」

と、どこからか消しゴミを投げられ、私の頭に当たる。

「よっしゃー命中ー」
クラスメイト男子が喜ぶ。

(無視…無視…)

そして、クラス中のだれもが

『死ねー死ねー、ゴミ虫消えろー消えろー』

と大声で言う。

廊下に聞こえないのが不思議である。


私はこれもスルーする


担任が来るまでこのコールは鳴りやまなかった。