午前7時45分―――
朝食を済ませ、家から駆け出す。
(やばい…急がないと遅刻だ!)
俺は樹希を抱えて、保育園まで走った。
「…はあ…はあ。今日も…先生、樹…希をお…願いします」
全力疾走したせいか、息が上がる。
少し呼吸を整える。
「はい。樹希、お兄ちゃんにいってらっしゃいしましょうね」
「にちゃ、いっちぇらっちゃい」
「ん。いってきます。では先生、夕方に迎えにきますんで」
「はい」
樹希と先生は手を振り、俺は保育園を後にしまたもや全力疾走で学校まで走って行った。
8:15分――――。
何とかぎりぎりで俺は教室についた。
「はあ…はあ…」
「お、陽。ぎりぎりじゃん」
朝一、教室に入ったとたん悪友かつ親友の真郷 尚弥(マサト タカヤ)声が耳に響いた。
尚弥は高校からの付き合いで俺に両親がいないことは話していない。
というか、言いたくない気持ちもあるが俺が同情されたくないせいでもある。
そういうところでは尚弥には後ろめたさがある。
「ちょっとな…」
「お、なんだなんだーひょっとしてこれか?」
尚弥は俺の肩に右腕を回し、左手で小指を立てた。
即効、おれは即答で否定する。
「なわけねーだろ」
「っちぇ、つまんねーの」
残念がる尚弥に俺は呆れる。
(あ、でも…)
俺はふと今朝のことを思い出した。
(いや、いやあれは違うし…。第一恋人ではなく彼女でもなく…彼女なんだけど…意味が違うくて…そ、その友達だよな…)
自分1人百面相していただろう。
(でも、まあ…あの子にまた会いたいな…)
あの子の笑った顔を思い出し、微笑んだ。


