そして、地面に落ちてあった帽子を見つけた。
(これこの子のだよな…?)
俺は帽子を拾い上げ、女の子に渡す。
「これ、落ちてたよ。はい」
「あ、ありがと!」
女の子は帽子を受け取り、俺に笑顔を向けた。
俺もつられて笑った。
「あ、あのさ、俺もう少しあんたの声を聞いていたいんだ」
「え?」
思わず本音を言ってしまった自分にすぐ後悔してしまった。
(な、何言っちゃてんのー俺…)
後悔しても言ってしまったものだから仕方がない。
彼女を引きとめてまで、もう少し声を聞いていたかったのも事実だから。
案外本音を言ってしまう方がいいのかもしれない。
「あんたの声、まるで歌手や声優みたいにすごく綺麗でいい声をしてるから…迷惑じゃなければもう少し聞かせてほしいなって」
「ふふ…ありがとう。…えっと、この場合、どうすればいいのかな?」
「え?」
「あなたに声を聞かせるためにはどうすればいい?」
「ああ…なるほど」
「なるほどって、あなたが言ったのに」
ふふと彼女は笑う。
彼女の笑顔に一瞬、胸が熱くなった。
でも、一瞬のことだったから俺は気にはしていなかった。


