さあ、俺と秘密をはじめよう



(き、気まずい…)

女の子は沈黙に耐えきれなかったのかどうかは分からないけど口を開いた。

「助けて?いただきありがとうございます」

(何故、クエスチョンマーク?)
と少し可笑しくなった。

それと同時にこの女の子の声がはっきりと透き通って、あまりにもいい声だった。

思わず、もう一度聞きたくなってしまうほどに…。

たった2度言葉を交わしただけなのに。



「いや、こちらこそごめん。ちょっと考え事をしていて」

「…実は私も歌に夢中だったので」

女の子は苦笑いし、俺もつられて苦笑いした。


「お互い様ってことで」

「そうですね。見たところによるとあなたもランニング中ですか?」

「うん」

あなたもってことはこの女の子もランニング中だったのか。



「あ、邪魔してごめんなさい。では」

女の子はお辞儀をして、俺の横を通り過ぎようしたが俺は咄嗟に女の子の腕を掴んでしまった。

(うわあ…何やってんだよ、俺!)

自分でもどうしてこんなの事をしたのか分からなかった。

ただ、もう少しこの子の声を聞きたかった。


「待って。えっと…」

(引きとめたのはいいんだよ。だが、な、何て言えばいいんだ?)

頭の中で言葉を色々と巡らせた。

何かいいのはないのかと、目線をずらした。