さあ、俺と秘密をはじめよう



本当のことを吐けーと追及され、

じゃれつつも


『35階です』

というエレベータから発せられたアナウンス。


「あ、ここで」と言い、俺は降り、文東さんたちも降りた。


俺は家のドアを開けた。

「ひ…」

諸星さんが何かを言おうとする。

ひ?


「ひろっーーーー」

と言い放つ。


ずっこけそうになる俺。

第一発生がそれかと突っ込みたくなるくらい。

まぁかく言う俺もそうだったわけだが。


ちょこちょことした奴がこっちへと突進してきた。


「にちゃ」と可愛く発する声は俺の弟である樹希だった。


「樹希!!」

「おかいりなちゃい…」

「ただいま、樹希。ってこんな時間まで起きてちゃいけないだろ?」


しゅんとする樹希の頭を撫でて、抱きかかえる。


やっぱり起きてるし…心配して帰ってきて正解だった。


「ごめんなちゃい…」

「もういいよ」


そんな光景を目の当たりにする文東さんたちは茫然と俺たち見ていた。

文東さんたちの視線に気づいたのか樹希はじーと文東さんたちに視線を向けた。


「ん?樹希?」

「………(誰?)」

あははと苦笑いする俺。


「樹希、この人たちは俺のバイト仲間の人たちだよ」

「あじめまして…たちゅき、5ちゃいです」

初めましてな…樹希。

でも、良く言えたぞー!挨拶は完璧だ!

感動する俺は樹希の頭を撫でる。


はっと気付いたのか、文東さんたちも

「初めまして、樹希君。おれは古坂 文東です。ちなみに21歳です。よろしくねー」

「ああ…初めまして、俺は諸星 イタク。19歳です。んでこいつが」

隣にいる八嶋さんに指差し

「八嶋 大地だ。18歳だ。よろしくな」

と三人とも真面目に自己紹介する。


ころころとした感じで頷く樹希。

「ふみにちゃ。いちゃ。たいちゃ」

と順番に指を指す。

「樹希、人を人差指で指しちゃダメです」

教育も俺の指導だ。

何としてでも樹希をまっとうな人間に育てる!

それがせめてものの亡くなった親孝行である。


ちなみに多分、ふみにちゃは文東さんで

いちゃは諸星さんで

たいちゃは八嶋さんだろう。


「ごめちゃい」


素直に謝る樹希に微笑む俺だった。


そして、横で肩を振るわす諸星さんは急に

「抱かせて!つーか触らせてくれ!」

と言った。

あまりの唐突さに俺は樹希を渡してしまった。