「で、どこに行くんだ?」
「まぁ、様子見というかなんというかですけど…」
「様子見?」
曖昧で脈絡もなく主語を答えるわけでもない俺である。
「ええ…まぁ、はっきりと言ってしまえば俺が住んでいるマンションですけど…」
「「「!?」」」
駅から徒歩10分くらい歩くいつもの道。
文東さんたちは黙って俺についてくる。
「つきました、ここです」
「ここって…」
上を見上げる文東さんたちは唖然としていた。
「超最高級マンションだよね…?」
「まぁ、家賃はそれなりに」
諸星さんたちは言葉も出ず、ただぼーと驚いていた。
ここで茫然と立っていられても困るからどうぞと言って俺は中に入った。
入ったすぐに毎度お馴染に天井にあるシャンデリアを妙に目に入りチラつかせてくる。
「うわあ~おれ初めてみたけどすごいねー」
「まぁ…そうですね…」
辺りを見回す三人は俺についていきエレベータに乗る。
35階―――最上階のボタンを押しIDを通す。
「超最高級マンションなんて初めて入ったわーすげー」
「タク、庶民丸出しだな」
「うっせー!庶民で悪いか!」
庶民で悪くないと思います。
かく言う俺も庶民である。
「陽君って何者?」
突然、文東さんが言ってくるのに
「ほんと、お前って何者だよ!?」
いや…何者って聞かれましてもねー?
ただの一般庶民の学生だ。
しいていうなら、両親がおらずたった一人の身内である弟を育てながら働いている勤勉苦学生とでも言うべきであろうか。
とは言え、ここでのベストな答えは
「ただの庶民な学生です」
だろ。
「「うそだぁー」」
と諸星さんと八嶋さんは声を揃えて言う。
本当のことなんだがな…。


