「いいですよ」
「遠慮なんかしなくていいんだぜ!」
「いや、本当に…今の俺に女性を相手にする暇なんかないですから…」
小声で言ったつもりが文東さんたちには聞こえていたようだ。
「そういえば、陽君シフトオールだったねー」
文東さんよく見てらっしゃる。
俺のシフトは月曜から土曜までびっしりとあって
日曜は時々あるという感じだ。
「まじか…うわぁーそりゃーきついわー」
「というか遊ぶ暇ないね」
俺に同情する諸星さんたちは当然だなと理解してくれた。
まぁ、それもあるんだが…
その他には勉学やら樹希の世話もあるわけでー。
ふと、俺はあることを思い出し気付いた。
「ああああああ!!!」
「「「!?」」」
「どうしたの?」
「お、俺、行ってきます!」
「どこに!?」
「たつきーーーー!!」
俺はダッシュで目的地へと――――。
「あ、陽君!?」
「お、おい!」
と、文東さんの呼び声にも気付かず、帰り道である電車へと向かって行った。
「ったく、陽の奴何だよ…」
「とにかく、陽君を追いかけよう!」
「「あ、はい」」
と、陽を追いかける文東たち。
「タツキって誰だ?女か?」
「俺が知るかよ、名前からして男?」
「おれも知らないなあ」
三人とも、樹希が陽の弟であることを知っているわけはない。
そして、もしかしたら陽はそっち系なのか?とイクタとタイチは思い浮かんだが文東には言わないでおこうと思った。
それもそうだ陽は言ってもいないのだから。
陽の思い出した用事とは樹希のことだ。
何よりも大切でかけがえのないたった一人の肉親である樹希は陽が自分自身より大切で優先していることである。


