「いや!何でもないっス!」
諸星さんは慌てて、平然を装う。
「そうですね…何も…何も…」
まるで思い出したくないように脳内末梢しようとする八嶋さんであった。
「文東さんは知らない方がいいかと思います…」
「??」
分からないと言った風な感じの文東さん。
仲間外れにするようで悪いけど、俺も出来れば早急に脳内末梢したい。
多分、これは―――あまりにもすご過ぎて、そう簡単に消えるものでもない。
「お前ら絶対に古坂先輩に言うなよ!!おまけに陟さんのキスがかなり上手すぎてすごいとか」
ひそひそと小声で忠告する諸星さんに八嶋さんは
「まじで?すごく上手いのかよ…つーか言えるわけねーだろ…」
「言えませんよ。言いたくても言えないですから」
だな、と言った。
今日は早く家に帰りたい気分になった。
そして風呂にゆっくりと浸かって今日の出来事を何もなかったかのように忘れさりたい。
「じゃあ、俺もう帰りますね」
「あ、今日、奢るって約束――」
文東さんに引きとめられた俺だが、約束のことをすっかりと忘れていた。
アレのお陰で。
「また今度でもいいですよ」
「でもさ、小腹空かない?」
確かに…言われてみれば
かなりお腹が空いた。
ぐぅ~と俺のお腹からなる音に俺は恥ずかしがりながらも苦笑いし
「お腹空きました」
「うん。じゃあ、どこか行こう!」
「あ、いいな~俺も!」
「俺もっス」
「えータク君たちも?」
うんうんと頷く諸星さんたちに、
文東さんたちは仕方がないなと言った風に
「おれたち三人で割り勘ね」
スタッフルームを後にした。


