了の顔が近くにある星名の反応は暫く無言になり周りも無言になったが、ようやく気が付き音速をも超えるアッパーカッターを了に食らわせました。
何でこうなったのか状況説明をきちんと了がした後―――。
「水野君、本当にごめんなさい。そうだとは知らず被害を加えてしまって…」
「いや、もういいんです。すごく痛かったですけど」
「はう…本当にごめんなさい」
「いえいえ、本当にいいんですよー」
了のその奥に宿る目はまだ根に持っているかのように見えた。
よっぽど星名のアッパーカッターが痛かったのだろう。
その見事なアッパーカッターに褒めたたえた瞬夜先生と大笑いしている尚弥たちであった。
「えっと…あんた名前はなんて言ったけー?」
頭を掻きながら思い出そうとする瞬夜先生に首を傾げながら星名は応える。
「星名爽歌です」
「ああ、星名ね。あんたどこでそんなすごい切れの良いアッパーカッターを覚えたんだ?」
「覚えてませんよ」
「へ?」
間抜け面する瞬夜先生。
「覚えてませんよ」
「全くもって?」
「はい。一度も武術とか習った事ないです」
「それにしたってあの切れのよさはド素人とは思えないんだが…」
星名は嘘を言っては無い。彼女は嘘をつく子ではないから。
だとしたら…。俺の勘で言うと---。
「人間危険だと判断したら火事場の馬鹿力でなんとかなるもんなんですよ」


