「陽君、そろそろ頼むねー」
隣で、カクテルを作ってる古坂はこっそりと俺に告げた。
「はい。分かりました」
さて、そろそろ例のアレをしますか。
例のアレとは何かって?
それは…
俺のショーだ。
ショーって言っても、軽くお客様にピアノを聴かせるだけだ。
つまり、演奏だ。
ほんの1時間くらい弾くだけだけど俺にとってこれは
大切な時間とも言えるだろう。
ピアノの腕前は陟さんのお墨付きで俺の演奏が聴きたいがためにくるってお客さんもいるほどだ。
だけど、この時間はだけは俺のオアシスとも言えるバイトの一時だ。
おまけに言うなら、練習かつ楽しくでき、これで給料も良くしてもらってる。
一石二鳥いや三鳥だ。
「お、そろそろ陽の演奏が始まる時間だな」
と誰かが声を高らかにして言う。
「演奏?って何?」
「まぁ、聞けばわかるさ」
そんな声がどこからか聞こえてくる。


