さあ、俺と秘密をはじめよう





「ああ、それはね。昨日水野先生がー」

顎に手を添える知砂。

「物凄く機嫌が悪くて」

汗をかきながら尚弥が苦笑いする中、了に渡り、

「一気に授業進めちゃってですねー」

了から昌太へと

「6限目だったから、放課後まで使ってノンストップで教科書の前期でやる範囲を全部したわけだ」

最後に俺に回ってきた。

「ということで後期までは自習ってことなんだ」


固まってしまった星名に対し俺たちは平然と説明した。


まあ普通ではありえないんだが、この水野先生は陟さんと同じように不可能可能にする男だ。


(つうか、普通じゃない)



遅刻もいいところで、終わったのが8時半で、それからすぐに樹希を迎えに行って、家に帰り、

私服に着替え樹希を置いてバイトに直行した。


お陰で昨日バイトに着いたときは、地獄絵図を見てしまった。

死ぬかと思ったくらい大変だった。


自分が機嫌悪いからって生徒にやつあたりすんなよ!と皆思ったであろう。

しかも、おまけに嫌なやつあたりの仕方だった。

思い出すだけでも頭が痛くなるし、吐き気がする。



ずっと机と黒板に向かわされた挙句、

有るものはトイレに行きたくても行かせてもらえず、

また有るものは落ちたものを拾おうとしたらチョークが飛んできたり、寝ようとしているものには反省文100枚とぶっ叩き起こされる始末だった。

とにかく鬼の形相でとてつもなくこれは逆らわない方が身のためだと学んだ。

地獄の国語授業で俺は当然燃え尽きた。


まあ、その代わりお詫びとして瞬夜先生は前期が終わるまでは自習を約束してくれた。


何で機嫌が悪かったのかは昨日の様子では聞けなかったというか聞いてはいけなかったと言った方が当りだろう。