「えっと、あんた名前は?あ、俺はこいつの幼馴染の田倉 昌太」
黒崎君をさし、田倉君が聞いてくる。
黒崎君に『主語』という辞書はなく、私のことは【彼女】とか【こいつ】とかで言って、かいつまんで経緯を話していた。
「星の名前に爽やかな歌と書いて、星名 爽歌です」
「うわー君、名前も綺麗ななんだな。俺、真郷 尚弥よろしく!」
握手をする。
この人は何だかムードメイカーって感じがする。
「そうね。声も綺麗で可愛いし羨ましいわあ。あたし、陽の幼馴染で親友の琴音 知砂。よろしくね、爽歌」
アルトボイスが特徴的で話してみると気さくで優しそうなお姉さん的な感じだった。
(私とは正反対な子・・・)
爽歌なんて女の子に名まえを呼ばれたのは初めてだ。
すごく嬉しくて私の一生分の幸せを今ここで使い切っているんじゃないのかなって思わせるくらい幸せだ。
幸せに余韻に浸っている私に琴音さんは顔を覗き込む。
「あ、いきなり爽歌なんて失礼だったかな?」
「あ、いえ。そ…そのすごく…嬉しいです」
私はきっと顔が真っ赤になっていることに違いないだろう。
「良かった。あたしのことも知砂って呼んでね、爽歌」
「はい、知砂ちゃん」
(知砂ちゃんか…なんだかすごく嬉しい)
初めて女の子とちゃんと喋った上に名まえを呼んでもらって今すごく幸せ。
こんなにも輝いて見える。
きっとこれは黒崎君のおかげだ。
ありがとう、黒崎君と心の中で感謝した。


