ううん、もうすでに私は泣いていたんだ。
目から頬へと伝う、透明な水がぽたぽたと静かに流れ出る。
「ほ、星名!?」
あわあわと慌てる黒崎君は戸惑っていた。
黒崎君の顔をまとも見れない。
こんな泣いている私の姿を見られたくなくて私は下に俯いた。
「だ・・・大丈夫だから・・・」
気にしないでと言いたかった。
「大丈夫じゃないだろ!!」
黒崎君は苦虫を噛んだような顔で怒鳴った。
そして、私の顔を持ち上げた。
その顔はとても綺麗で本当に私のことを心配してくれているのだ。
(私は泣いちゃだめなんだって分かっているのに・・・)
「何があったんだ?俺でよければ聞くから」
「……」
何も答えない私に黒崎君はただじっと何も聞かずに待ってくれている。
風が私の頬をかすめ、ひんやりとする。
涙を抜くってくれた黒崎君の優しさに私はまた泣いた。
優しさは時に罪なものだ。
こんなに優しくされたのは生まれて初めてだった。
今まで友達も作らないでいた。
家族すら碌に会話もしたこともなかった。
どうして、彼はこんなに優しくしてくれるのだろうか?
「どうして・・・」
「ん?」
「どうして・・・そんなに優しくするの?」


