無我夢中になって歌っていた。
歌に想いをこめて吐き出していた。
私は歌うことで感情を解放する。
想いを言葉に一つ一つこめて、それが私の生きた証となるように―――。
「――――♪君に捧げる――♪」
一つの拍手が聞こえてきた。
人がいたなんて気付かなかった。
はっとして拍手が送られてきた方向へ振り向いた。
その人物に私は驚かなかった。
だって、驚かなかったのは私の知っている人物だったから。
黒崎君だったから・・・驚くというよりも安心の方が大きかったけど・・・今は会いたくなかった。
(なんで・・・いるの?)
「また・・・星名の歌声が聞けた」
ふっと笑って私に近づく。
その温かな笑顔。
「な、なんで・・・」
口元を手で覆い隠し、必死で泣きそうなのを堪える。
この笑顔を見たら安心して、涙腺が簡単に切れてしまう。


