知砂と了は俺を窓から引き離した。
「あぶないわよ!!って陽何で泣いてるの?」
(え?俺が泣いてる?)
顔を触ってみたら泣いていた。
全然気がつかなかった。
「陽?大丈夫か?」
俺のそばまで心配してやってくる尚弥と昌太。
「俺は大丈夫。歌声が・・・」
「「「「歌?」」」」
「ああ…歌声が聞こえるんだ」
屋上を見つめた。
尚弥たちやクラスの皆は耳をすませた。
「本当だ。歌が聞こえる・・・」
「うん。すごく綺麗ね」
皆がそう感想を述べる中、了は違うことを述べた。
「確かに綺麗ですけど・・・孤独を感じさせますねー」
了も俺と同じことを思ったのかどうかは知らないけどとにかくそう感じたんだ。
そして何故か、皆の目から涙が流れてきた。
悲しくもないのに・・・どうしてだか涙が溢れ出てくる。
それはこの歌に俺たちの脳に揺さぶられ、共感してしまったということだ。
(こんな歌を歌える星名がすごい・・・)
「誰が歌ってるのかしら?」
「音楽科の先輩でしょうかねー」
「でも、こんなめっちゃ上手い歌を歌えるなんて、この音楽科、2・3年含めてもにそうそういねーよ。いたら噂になるぜ」
「そうよね。尚弥の言うとおりだわ、・・・いたら噂になるものね」
「噂になってないんだったら・・・一体誰が歌ってるんでしょうね・・・」
知砂を踏まえ、了、尚弥が意見しあう中、俺の様子はただ星名のことを考えていた。


