「あー、えっとですねー、陽君。知砂さんは陽君のことがす・・・ぶはっ・・・」

急に知砂が了に向かってとび蹴りを喰らわせてきた。

了は一撃で昇天に召された。

(また1人犠牲者が・・・)

「はあ・・・はあ…っ、きゅ、急に何を言い出すのよ!?」

真っ赤な顔をし、知砂は了に怒鳴りつける。


「あー、知砂。もう了には聞こえてないから何を言っても無駄だ」

一番出口に近く、なおかつ俺や知砂から離れたところで昌太がメガホンを持って言う。

(昌太いつの間に!?)

どこからメガホンを出したのが気になるが今はそんな状況じゃない。


とにかく知砂を落ち着かせるのが最優先だ。

「知砂、落ち着つくんだ!!」

「落ち着いてるわよ!!」

知砂は涙ぐんで、俺に向かって怒鳴った。

「俺が悪いのか?」

「陽のせいじゃない!」

「だけど・・・」

「陽のせいじゃない。私が悪いの。ごめんなさい・・・1人で怒って怒鳴りつけて」


そう言って、知砂は俺と昌太にごめんねと謝った。

何とかこれはこれで解決したみたいだ。


生き返った尚弥たちは俺たちの元に来て知砂に謝罪を要求する。

「知砂、俺らには?」

「そうですよー」

「えっと・・・すまん!以上」

「それだけかよ!!」

「俺ら結局殴られ損でしたよねー」

「だよなー。めっちゃくちゃ痛かったし」

「うんうん。俺なんかとび蹴りですよ」

「俺は正拳に回し蹴りの2コンボだぜ!」

「いや、あれは・・・あんたたちが悪いんでしょ・・・ボソ(それに陽に知られちゃったりしたら・・・ああいうのは私が言うんだから・・・)とにかく!謝ったんだからいいじゃないの」

「誠意が感じられないんだよー」

「そうですよー」

「そう。そんなにもう一度殴られたいのかしら?」

腕を鳴らす知砂に尚弥と了は「もう、結構です」と声をそろえて萎縮する。


俺はその相図を見て笑った。