遠い、

去年と同じ春が巡ってきた時、
ふと中一の時の記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
部活の剣道は頑張る気が無いし、勉強もそうだった。
でも友達関係はそれなりにうまくいってたし、
恋の方もまぁまぁだと思った。

うちには大好きな人が居た。
剣道場の隣の柔道場でいつもバク転やロンダートを軽々しく決める、柔道部部長の
佐藤光。
佐藤先輩は一個上の2年生。
向こうは向こうでうちの事を
いつも可愛いと部員に漏らしていたそうだ。

だからうちは、1年の二学期中間テストが終わった後、佐藤先輩に告ると決めた。

結果は「ごめん」と一言。

うちはそうですか、と言い、
直ぐに帰るはずだった。
でも佐藤先輩は
「キスしない?」
と言った。
何がどうしてそうなったのだろう。
でもうちはどうしても佐藤先輩が
好きだったので、いいですよ、と言ってしまった。

どうして、ファーストキスを軽々渡してしまったのだろう。
今思っても後悔しかできない。

その後、手紙で
「私たち付き合ってるんですか?~以下略~」

と書いたことがある。
その手紙には、
「無理。サヨナラ」
と筆ペンで走り書きされていた。

うちはその日を境に佐藤先輩には
見向きもし無くなった。
簡単に言えば、興味が無い。

その次の好きな人は、
同じ部活の一個上の
阿部康太郎だった。

阿部先輩は部活でもクラスでも学年でも
皆から好かれていた。
特徴は眼鏡で、色白、運動神経抜群で、
俺様で、でも年上には敬意を払っていて…

うちの理想だった。
うちが入部した時は、三年生の方がカッコいいかな、
でも、あの阿部って人もちょっとカッコいい…?
見たいな感じで、見向きもしなかったのに。
うちは匂いフェチで、阿部先輩は凄い
良い匂いがした。

阿部先輩は同学年の皆から
こうちゃんって言われてたから、うちも
いつの間にかこうちゃんと言っていた。

一年でこうちゃんと言っているのは
うちだけで、いつも加藤南、上里唯って
いう同じ部活の人に注意されてた。
あとは、女剣の先輩とか…かな。