すると、
彼が手招きをした。


これが、ラストチャンス。

彼が「分からない」と言ったら、私はどうするんだろう?


「お呼びでしょうか、お客様」


30のAの座席には、余裕の表情の彼が座る。

私、一人だけドキドキが止まらない。


「待ってるからな」


「はい? お客様、約束が違います」


最初から名前を当てるなんて無理なんだ。


高度35000フィート上空で出会いは、単なる偶然なんだ。

これは運命の出会いじゃない……



その答えに落胆する自分がいる。