完徹―――……
してしまった。
しばしばと目をまばたいて、重い頭を起こすために冷たい水で顔を洗っていると、
TRRRR…
ふいにケータイが鳴った。
周からだった。
「はい!」慌てて出ると、
『ヒロ―――…俺だ』と若干疲れているような、周の声が聞こえてきた。
「あ…うん。どうした?もう帰れそう?」
『いや…、悪いんだが、水族館デートは延期にしてもらえないか?ちょっと立て込んでて、俺が抜けるわけにはいかないんだ』
え―――………
『お前が楽しみにしてたのは分かってる。だから今度こそ必ず埋め合わせするから』
周の声にどこか張りがなかった。いつになく真剣だ。
寝てないのか?それとも厄介な事件を扱って精神的に参ってるのか?
聞きたいことはいっぱいあった。
そして…
行くっていったのに。昨日はずっと連絡待ってたのに。
俺の中は我儘な本心で満たされた。
こんな俺、自分自身でもイヤになる。
そんな汚い自分を押さえつけるように、俺はことさら明るく笑って、
「そっか…何か大変そうだな。気にしなくていいから、無事に帰ってこいよ」
そう答えていた。



