- π PI Ⅱ -【BL】



完徹―――……


してしまった。


しばしばと目をまばたいて、重い頭を起こすために冷たい水で顔を洗っていると、


TRRRR…


ふいにケータイが鳴った。


周からだった。


「はい!」慌てて出ると、


『ヒロ―――…俺だ』と若干疲れているような、周の声が聞こえてきた。


「あ…うん。どうした?もう帰れそう?」





『いや…、悪いんだが、水族館デートは延期にしてもらえないか?ちょっと立て込んでて、俺が抜けるわけにはいかないんだ』





え―――………


『お前が楽しみにしてたのは分かってる。だから今度こそ必ず埋め合わせするから』


周の声にどこか張りがなかった。いつになく真剣だ。


寝てないのか?それとも厄介な事件を扱って精神的に参ってるのか?


聞きたいことはいっぱいあった。


そして…


行くっていったのに。昨日はずっと連絡待ってたのに。


俺の中は我儘な本心で満たされた。


こんな俺、自分自身でもイヤになる。


そんな汚い自分を押さえつけるように、俺はことさら明るく笑って、


「そっか…何か大変そうだな。気にしなくていいから、無事に帰ってこいよ」


そう答えていた。