どうかしてるぜ。
周の作った人魚ヒロジを持って眺めると、人魚ヒロジは緊張感のない顔でのほほんと笑っている…ように見えた。
「俺に似てるかぁ?」なんて独り言を漏らして、シッポをちょっと引っ張ってみる。
「早く日曜日にならないかなぁ」
テーブルに頬杖をついてヒツジのぬいぐるみを眺める俺……傍から見りゃ相当イタイ…
「やめだ、やめ!」
俺は人魚ヒロジを放り出すと、ソファに身を沈めた。
「悩んだってしょうがない。今は周を信じて待ってるしかないな」
―――――
――
奪ってみれるもんなら奪ってみろよ。
なんて陣内に大口叩いたけど、実際陣内の方が断然有利だ。
あいつは周の近くに居て、仕事の辛さとか難しさを直に分かち合える。
俺が周にできることと言ったら―――……
せめてあいつがゆっくりとリラックスできる環境を作り上げることぐらいだ。
次の日の土曜日、俺は必要以上に部屋やバスルーム、トイレなんかの掃除をした。
ぴかぴかに磨いて、輝いてる程だ。
洗濯もして、周や俺のワイシャツにアイロンを掛ける。
それでも有り余る時間を“円周率の求め方”を読んで潰した。
周から連絡はこない。
こんなこと初めてだった。
どんな捜査に関わっていようと、あいつはどこか暇を見つけては電話やメールを寄越してくる。
それなのに今日は一日俺のケータイが鳴ることはなかった。
何かあったのかな……
そんな不安を感じながら、明日は約束の日曜だと言うのに、その夜俺は一睡もできなかった。
明日デートだからとかそうゆう嬉しい緊張じゃない。
怪我してたら…、とか、犯人に拉致られたりしてたら…―――とか、
嫌な想像だけが巡り、日曜日の朝を迎えた。



