俺は刹那さんと並んでマンションまで帰った。
その間、周の昔の話なんかを聞いた。
刹那さんの話では、周は今とほとんど変わらず…ようは昔っから変態で意味不明野郎だってわけだ。
少し前までは、そんなことを聞いてももやもやと心を濁らせるだけなのに、今は風が凪いだように穏やかだった。
マンションまでたどり着いて、俺は迷った。
このまま「さよなら」じゃ悪い気がした。だからと言ってここは周のマンションでもあるわけだから、勝手に入れるわけには行かないし。
なにせこの人は俺に気がある(?)みたいだし…
どうしようか悩みながら鍵を取り出して、ふと振り返ると
刹那さんはまたも姿を消していた。
あとに残されたのは№5の香りだけで、それだけが妙に彼女の存在を物語っていた。
幻ではない。夢ではない。
だけどあたしは存在する。
そう言われているような気がした。
「変な人…」ぽつりと漏らして、俺は部屋に入った。
変だけど、きれいで同じだけかっこよくて、きっと周みたいに―――優しい人なんだよな。
きっと………
――――
――
その日夜遅くに周から電話が掛かってきた。
『悪いな。やっぱり今日は帰れそうにない』
想像してたことだけど、やっぱりちょっと寂しい…
『寂しいか?』と聞かれ、
「別に」なんて強がってしまった。
テーブルに広げた円周率の本を慌てて、閉じる。
周に見られてるはずないのに、それが妙に気恥ずかしかった。



