- π PI Ⅱ -【BL】



俺は刹那さんと並んでマンションまで帰った。


その間、周の昔の話なんかを聞いた。


刹那さんの話では、周は今とほとんど変わらず…ようは昔っから変態で意味不明野郎だってわけだ。


少し前までは、そんなことを聞いてももやもやと心を濁らせるだけなのに、今は風が凪いだように穏やかだった。


マンションまでたどり着いて、俺は迷った。


このまま「さよなら」じゃ悪い気がした。だからと言ってここは周のマンションでもあるわけだから、勝手に入れるわけには行かないし。


なにせこの人は俺に気がある(?)みたいだし…


どうしようか悩みながら鍵を取り出して、ふと振り返ると


刹那さんはまたも姿を消していた。


あとに残されたのは№5の香りだけで、それだけが妙に彼女の存在を物語っていた。




幻ではない。夢ではない。


だけどあたしは存在する。




そう言われているような気がした。


「変な人…」ぽつりと漏らして、俺は部屋に入った。


変だけど、きれいで同じだけかっこよくて、きっと周みたいに―――優しい人なんだよな。


きっと………



――――

――


その日夜遅くに周から電話が掛かってきた。


『悪いな。やっぱり今日は帰れそうにない』


想像してたことだけど、やっぱりちょっと寂しい…


『寂しいか?』と聞かれ、


「別に」なんて強がってしまった。


テーブルに広げた円周率の本を慌てて、閉じる。


周に見られてるはずないのに、それが妙に気恥ずかしかった。