犯行がエスカレートしてる…
その事実に俺は目をまばたいた。
この犯人には、ただ単に男を襲って金を奪うだけの犯行が物足りなくなったんじゃないか?
そんな気がした。
しかし一般人の俺が幾ら考えたって、どうしようもないことで…新聞を読んでいたらあっという間に時間が過ぎていった。
慌ててしたくをすると、俺は新聞を持ったままマンションを飛び出した。
電車に揺られながら、俺は持ってきた新聞を食い入るように読んだ。
男子学生が狙われたのは、またもこの付近だ。
犯人はこのすぐ近くに居る―――?
「よっ」
ふいに背後から声を掛けられ肩を叩かれて、びっくりして飛び上がりそうになった。
慌てて振り向くと、こっちもびっくりしたように目を丸めた三好が立っていた。
「どーしたんだよ…幽霊にでも会ったような顔して」
三好が苦笑した。
「あ、三好…おはよ。って、お前この電車だっけ?」
「俺は昨日実家に泊ったんだ。ちょっと用があって。お前こそ反対方向じゃね?」
「あ、えーと…引っ越したんだ…その…恋人(?)の家に」
いいにくそうに口ごもると、
「へぇ?同棲??やるね♪」と三好は頬を緩めた。
ええ…毎日のようにヤられてます。とは口が裂けても言えねぇ。
そんなことを考えて視線を泳がせていると、三好が俺の手元にある新聞を覗き込んだ。
「あー…この事件、今朝ニュースでやってたよな。何か色々わけわからん世の中だよな。男が男を?理解できん」
理解しなくていいです。って言うか、理解しないでください。
俺は新聞を畳むと、
「それより日曜の合コンのメンバー決まったのか?」と話題を変えた。



