昨日の……
俺は目を開いた。
黒い艶やかな髪の間に鮮やかな銀色の髪がきらきら光って風でなびく。
その瞬間、女の人からすっごく良い香りが漂ってきた。
何て言うの…?大人の女が纏う上品で優雅な香り。
「あ…えっと…どうぞ」慌てて席を促すと、女の人は優雅な仕草で椅子に腰を掛けた。
ってか……どーしてここ??
他にもいっぱい席空いてるのに。
俺がキョロキョロと辺りを見渡していたけど、それでも女の人は気にした様子がなくウェイターに紅茶を頼んでいた。
相席なんて慣れてるからいいけど…でも正直若い女性が座ってくるのははじめてだから何を話していいか分からない。
しかもこの人何か謎だし…
周…早く来ないかなぁ。
なんて思っていると、
「良く会うわよね」なんて女の人が突如口を開いた。
「……へ?」
突然のことでこんな間抜けな答えしか出てこなかった自分が恥ずかしい。
だけど女の人は気にした様子はなく、うっすらと口元に笑みを浮かべて優雅に頬杖をついた。
「最近良く会うわよね」もう一度女の人は、はっきりと言った。
「あ。はい!ぐ…偶然ですよね…」曖昧な苦笑いを漏らして、俺は慌ててコーヒーに口をつけた。
女の人は喉の奥でくすっと笑うと、
「全てにおいて偶然なんてないわ。そう、物事においてはすべてが必然」
静かに放たれた言葉は、その音量とは反対に説得力にみなぎっていった。



