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照明を落とした寝室の中で、俺の息だけがやけに大きく響いた。
「……苦し…」
呻くように声を出して周の腕に縋る。
何回しても内蔵を圧迫するような不快な痛みに慣れることはないし、その都度感じる苦痛に意識が遠のきそうになる。
思った以上の力が入り、周の腕に爪を立てるが周は気にする様子がない。
「力抜け、ヒロ。大丈夫だ…」
宥めるように囁いて、俺の耳の後ろに優しく指を滑らせてくる。
あの爽やかな香りが、今は周の汗と混じってバニラのような僅かな甘さを漂わせている。
その香りと感触にくすぐったいような、心地いいような……わずかな快感となって俺を満たし、痛みと心地よさが交互にやってきては、不思議な感覚を覚えた。
周の香りをもっと間近に感じたくて、俺は周の首に腕を回すとこいつを引き寄せた。
爽やかなのに甘い―――
痛いのに心地いい。
二つの相反する香りと体感に―――
俺は紛れも無く溺れていた。
「周。好き―――……」
そっと周の耳元で囁くと、周は少しだけ甘い微笑を浮かべ、
「俺も好きだ」
と返してくれた。



