若い男だった。俺よりちょっと下ぐらいの。
スーツ姿で、身長も体格も俺に少し似ている。
“警視”って言ったから、この男も周の同僚なんだろう。刑事―――と言うよりは何か普通に居るサラリーマンみたいな感じだ。
男は俺たちの元へ駆け寄ってくると、
「橘警視、もうっ。どこへ行ってたんですか。聞き込みに行くって出て行ったきり帰ってこないなんて」
とぷりぷりと怒った。
「どこへだっていいだろう。お前は俺の恋人か」と周は不機嫌そうに、ふんと鼻を鳴らした。
あれ…?珍しく機嫌が悪い…?
そんな思いで周を見上げていると、
「こちらは…?」と男が俺をじっと見てきた。怪訝そうな表情を浮かべている。
「こいつは俺の愛するハニーだ」
なんて周がとんでもないことを言い出して、俺の肩をぐっと引き寄せた。
「ハニーって、え!?橘警視の恋人!?」
と男は目を開いて固まった。
周は男の質問を無視して俺の肩に力を入れ、さらに抱きしめると、
「ヒロ、こっちは先週異動になった陣内(Jinnai)巡査。俺の部下だ」
とさらりと言った。
俺は―――…と言うと、
ハニーとか…
「何言い出すんだ!」なんて喚きながらも、こいつの腕の中の心地いい香りの中で抵抗らしい抵抗ができなかった。
「そうゆうわけで俺は今からハニーとラブラブの夜を過ごすんでね。邪魔するなよ。陣内」
そう言い置いて、唖然とする陣内巡査を置いて周は俺の肩を抱きながらマンションに入っていった。



