無駄に広いリビングのソファに、変態刑事はため息を吐きながら腰を降ろした。
「桐ヶ谷…一体どうしたって言うんだろ…」
今まで意見の食い違いで言い合いになったことはあったが、それでもあそこまであからさまな拒絶はなかった。
しかもこの刑事も追い払われてなかったか…?
一種異常とも言える反応だ。
刑事は深くため息を吐きながら額に手をやり……ってか何でそんなに無駄にかっこいいんだよ!こいつぁ!!
「ヒロは怖いんだろう」
「……怖い?」
「ああ、今は誰が近づいてもああだろう。諦めるしかないな。
ヒロがああなったのは…陣内の出来事と…それから俺のせい(←注:超小声)だ」
はぁ?
「俺のせい…ってどういうことですか!」
俺が勢い込むと、
「ちっ。聞こえていやがったか」と刑事はまたも小声で舌打ちする。
「あんた、桐ヶ谷に何をしたんだよ!」
俺がまたも勢い込むと、刑事は顔をそむけて、ごにょごにょと話し出した。
話を一通り聞き終えて―――俺は今度こそ頭にはっきりと血が昇るのを感じた。
「喧嘩して桐ヶ谷に乱暴!?てめぇよくそれであいつと一緒に居れるな!!」
ほとんど胸ぐらを掴む勢いで怒鳴ると、刑事は切れ長の目を俺に向けた。
意思の強そうな光を湛え、鋭く尖った視線。もし目に力があるのなら―――俺はこの視線が怖いと思う。
抗えない強い視線。怖いと思う一方―――その視線に囚われて、目が離せない。
俺はちょっとたじろいで、一歩足を後退させた。
刑事はその不思議な圧力のある視線を向け、俺に問いかけてきた。
「じゃあ聞くが、お前がしようとしたことは俺のしたことと違うってのか?」



