- π PI Ⅱ -【BL】



無駄に広いリビングのソファに、変態刑事はため息を吐きながら腰を降ろした。


「桐ヶ谷…一体どうしたって言うんだろ…」


今まで意見の食い違いで言い合いになったことはあったが、それでもあそこまであからさまな拒絶はなかった。


しかもこの刑事も追い払われてなかったか…?


一種異常とも言える反応だ。


刑事は深くため息を吐きながら額に手をやり……ってか何でそんなに無駄にかっこいいんだよ!こいつぁ!!


「ヒロは怖いんだろう」


「……怖い?」


「ああ、今は誰が近づいてもああだろう。諦めるしかないな。


ヒロがああなったのは…陣内の出来事と…それから俺のせい(←注:超小声)だ」


はぁ?


「俺のせい…ってどういうことですか!」


俺が勢い込むと、


「ちっ。聞こえていやがったか」と刑事はまたも小声で舌打ちする。


「あんた、桐ヶ谷に何をしたんだよ!」


俺がまたも勢い込むと、刑事は顔をそむけて、ごにょごにょと話し出した。


話を一通り聞き終えて―――俺は今度こそ頭にはっきりと血が昇るのを感じた。


「喧嘩して桐ヶ谷に乱暴!?てめぇよくそれであいつと一緒に居れるな!!」


ほとんど胸ぐらを掴む勢いで怒鳴ると、刑事は切れ長の目を俺に向けた。


意思の強そうな光を湛え、鋭く尖った視線。もし目に力があるのなら―――俺はこの視線が怖いと思う。


抗えない強い視線。怖いと思う一方―――その視線に囚われて、目が離せない。


俺はちょっとたじろいで、一歩足を後退させた。


刑事はその不思議な圧力のある視線を向け、俺に問いかけてきた。






「じゃあ聞くが、お前がしようとしたことは俺のしたことと違うってのか?」