びっくりして、目をまばたくと―――
「だよなぁ。俺だって男だし、まったくそうゆう欲がないとは言い切れないし」
でもさ
桐ヶ谷はグラスを見つめて目を細めて続けた。口には笑みが浮かんでいたが、その笑みはどこか物悲しそうだった。
「お前そうゆう話ししたとき、周り気にしたろ?」
言われて、俺は頷いた。
桐ヶ谷が振り返り、その顔にはやっぱり寂しそうな…悲しそうな表情が浮かんでいた。
「そうゆうことだよ。俺たちは普通の夫婦じゃない。お前がしてるのも普通の恋愛じゃない。
ただのおふざけの会話だって、一々周りを気にしなければならない」
―――…それって寂しいことじゃない?
そう締めくくって、桐ヶ谷は何でもないようなふりでグラスを取った。
俺は目をまばたいて桐ヶ谷を見つめたが、桐ヶ谷は普通に戻ってグラスを傾けている。
左手薬指にはめられたリングが、グラスの持ち手に当たって、カチリと冷たい音を立てる。
俺には―――その音が
やけにはっきりと聞こえた。
―――
それから一体何杯飲んだのだろう。
あれから俺たちは普通の世間話なんかをしていたが、お互いやけにハイピッチだった。
そう、俺たちはマイノリティだ。
それがいけないことだとは思わないが、気持ちいいものだと思う人間なんていないだろう。
子孫を残すこともできなければ―――…家族だって悲しませることになる。
桐ヶ谷の楽しそうな横顔は
「今ならまだ引き返せる。今のうちだ」と物語っているようだった。
俺は胸に滞るもやもやを飲み込むように、アルコールを喉に通した。
―――「久々、酔っ払ったぁ」
と桐ヶ谷が両手を挙げ、夜道を歩く。何だかハイテンションで楽しそうだ。
俺はその隣をのんびりと歩いた。
淡い月の光に照らし出された、桐ヶ谷の白い横顔が―――ほんのりピンク色に染まっていて…
やっぱり―――きれいだった。



