俺はワインよりも普通のカクテルの方がいいな。
バーテンにギムレットを頼んで、その間桐ヶ谷のワインを少しもらった。
間接キス??なんてドキドキしたけど、一口、口に含んで…
……シブ…
…う゛~ん、やっぱ俺にワインの良さは分からん。
だけど桐ヶ谷は
「これも旨いけどもっとパンチの効いたフルボディがいいな。次は違うのにしよ~」なんて言ってメニュー表をパラパラ。
可愛い顔して好みはかなり渋い……
俺はギムレットのジン程度がちょうどいいかな?
バーカウンターの向こう側でバーテンがシェイカーを振る音が心地良いい。
その音に紛れさせて、俺はこそっと気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ桐ヶ谷…今日はゆっくり眠れるって…その…」
言いづらそうに言葉を濁すと、
「うん♪広いベッドもふわふわの布団も枕も独り占めだ。夢も見ずに朝までぐっすりだぜ」
なんて桐ヶ谷は答える。
いや…俺が聞きたいのはそーゆうことじゃなくて、でも“独り占め”とか考えが子供みたいで可愛いな♪
「そうゆう意味じゃなくて、アイツとはどーなんてんの?その…夫婦の…営み…とか…」
俺が聞くと桐ヶ谷はようやく俺が何を言いたいのか気付いて、グラスを持ったままピキッと固まる。
「聞くな!」
真剣に言われて、俺が思わずたじろぐ。
だけどすぐに桐ヶ谷が考え直したようにグラスを傾けて、
「別にフツー」と呟いた。
「普通?」
聞き返すと、桐ヶ谷はワインをぐいと煽り、俺を真剣な目で見据えてきた。
びっくりするぐらいその視線は真剣で―――同時に冷め切っていた。
「お前さ、単なる興味本位で聞いてる?それだったら勘弁して」



