- π PI Ⅱ -【BL】




それでもめげないもんね。


何せ桐ヶ谷が仕事中は、あのイケメン…(ってのは悔しいから変態でいいや)刑事も近くに居ない。


これは一気に距離を縮めるチャンスでは??


そう思って俺は桐ヶ谷を昼食に誘ってみた。


俺は食堂のランチだけど、桐ヶ谷は弁当。


白い生成りのちっちゃなトートバッグの中には、いっつもあの変態刑事のお手製弁当が入っている。


しかもトートバッグにふわふわしたヒツジと狼のマスコットがくっついてるし。


あいつの趣味じゃないから、あの変態刑事がやったに違いない。


「恥ずかしいっつの」と言いながらも、桐ヶ谷はそれをくっつけたまま。


何だかんだで…あの変態(…もはや刑事もつけない)が好きなんだよなぁ。


「何これっヒツジと狼?♪かわい~~♪桐ヶ谷主任のおべんと袋??」


と声を上げたのは同じく食堂でランチしていた女子社員。


ちなみに今桐ヶ谷は電話を掛けに席を外している。何でも水戸黄門を録画し忘れたとか。あの変態が一度マンションに帰るらしいから、撮ってもらうと言っていた。


そんっなに好きなのかよ、水戸黄門。


ってのは今はいい。


「桐ヶ谷主任て今はやりの弁当男子??」と女の子。


もう一人が、


「違う違う~愛妻弁当だよ。このぬいぐるみも奥さんがつけたみたい」


「え゛!桐ヶ谷主任って結婚したの!?いつっ!」


「いつって、さぁ。でもいつの間にか薬指に結婚指輪がはまってた。三好さん知ってます?」


俺に聞くなよ。ってかその反応……


「やーん!!あたし桐ヶ谷主任狙ってたのにーー!!」


女の子は今にも泣き出しそうに叫び声を上げた。


やっぱり??




桐ヶ谷は―――モテるんだよなぁ。


しかも隠れファンが多そうだ。本人これっぽっちも気付いていない鈍鈍野郎だけど。