俺はすぐ近くまで来ていた周と、刹那さんを見比べてパクパクと口を開けた。
「周!お前バツイチだったのかよ!?」
俺は慌てて立ち上がると、周は
「言ってなかったっけ?」とさらり。
「きーてない!!」
「橘 刹那って、だっさい名前だと思わない??」
「ださいとは何だ。俺様の名字は世界一美しいに決まってるだろ」と周は刹那さんにガン垂れている。
「それよりも何でお前がここに居る。ラブラブデートの邪魔をすんじゃねぇ。巣に帰れっ、蜘蛛女」
「元妻に向かってひっどい仕打ちね。はいはい、邪魔者は退散します~。じゃね、ヒロ♪」
刹那さんは投げキッスをして、立ち去っていった。
い、いやいやいや……
―――
そのあとのイルカショーは、言うまでもなく全然集中できず、可愛いイルカが飛んだり跳ねたりしているのをぼーっと眺めていた。
せっかくの水族館デートだって言うのに、刹那さんの爆弾発言で散々だ。
イルカショーの見物を終えて、再び展示してある魚たちの水槽を見ても、俺はさっきと同じように楽しめなかった。
はぁ…周と刹那さんが夫婦だった……
お似合いだな……
円筒形の水槽を優雅に泳ぐ色とりどりの熱帯魚を見て、俺は深々とため息を吐いた。



