「刹那さん結婚してたんですね。俺…知らなかった…」
何とか話題をそらすために言うと、
「12回…ううん、13回かしら?したわね」
13回も!?いやいやいや……結婚ってそう何回もするもんなの!?
俺がびっくりしていると、
「ヒロははじめて結婚した人に似てるの」と刹那さんはにっこり。
「ヒロみたいに平凡で真面目な人だったわ」
グサッ!
悪かったな!平凡って!!気にしてることさらりと言うなよ。
「ヒロみたいに華やかな顔立ちはしてなかったけど、冴えなくてどこにでも居るサラリーマンだったけど、一生懸命で―――優しかった…」
刹那さんは俺の頬から手を離すと、またポケットに手を突っ込んで遠くの方を眺めていた。
その視線が過去を懐かしむような、切ないような……複雑な色をしていた。
「あの人と居ると、楽しくて、安心できて、置かれている立場や運命をいっとき忘れることができた。
あたしはそんな人を求めていた。ヒロだったらあの人と同じ安らぎを手に入れられると思ったから」
「だけど俺はその人じゃない。その人の代わりになんてなれないし、なるつもりもない」
俺が言い切ると、刹那さんは悪意のない顔でにっこりと笑った。
「周が言ってたわ。きれいな顔してかなり毒舌だって。あたしの手には負えないだろうって。本当だったわね」
手に負えんって…
周―――そんなこと言ったのか(ちょっと怒)
「その人と離婚したのはやっぱり刹那さんの犯罪絡みですか?」
と気になったことを聞いてみた。
「まぁそれもあるけど。ずっと一緒には居られないある事情があってね」
「一緒に居られない事情?」
「そ。あたし―――歳を取らないのよ」



