わたしだけを見てほしいのに

「バンドとかやってモテちゃうと
調子乗るんだよ。
純哉なんかしょっちゅう
女からメール来てるよ。」

メールを打っていた映奈が
携帯から顔を上げて
きゅうに話に加わった。

映奈は怒っていても
不思議となんだかいつも
どこかに余裕が感じられる。
私はそれが羨ましかった。

「でも直ちゃんは別。彼は硬派だよ!」
「直ちゃんて、ミシェルの直樹くん?」

仁絵ちゃんからきゅうに、
直樹くんの名前が出てきて
ハッとする。

あの日から私は、
密かに直樹くんに感謝していた。
彼のおかげで、
最悪な状況から逃げないで
なんとか立ち向かえたから。