保健室から出て、廊下をすたすた歩いていると、
ぽつぽつと降り出してきた雨。


そういえば、降るって言ってたな...と
思いつつ、カバンの中を探る。


...確かに入れてきたはずの、折り畳み傘の感触が

ない。

その場にカバンを落っことして、中身をひっくりかえすように探しても、
ない。

教室か。

思った時には、雷が鳴り始めていた。

「...はぁ」


いやいや、足を教室へ向ける。

*   *   *

戻ってきたときには、さっき教室に行く時までなかった人影があった。
目をこすってもそれは消えない。

おそるおそる

「...水嶋先生?」

と声をかければ、
その長身は振り返った。
まぁ。声かける前から水嶋先生だってことはわかってたんだけど。

「...君、朝の?」

「あ、すみません。朝は有難うございました」

「いや、良いんだけど」

そういって、水嶋先生はまた鉛色の空に視線を戻す。


顔があまりにも
「止まないかな」
と語っていたので、


「水嶋先生、傘無いんですか」

聞いてみたら、心底驚いたような顔されたけど。
次の瞬間、私の口は随分と勝手なことを言っていた。

「...入りますか」