人魚姫がくれた唄

青年を、浜まで連れて来た。

砂浜に引き上げて、青年の顔を見つめる。

「不思議ね…。
あなたは私の銅像にそっくり。」

青年の頬に、手をあてる。
白い顔は、とても冷たくて、この顔が、目を開けたら、どんなに美しく私を見つめるのだろうかと、考えた。

そして、青年の唇に、自らのそれを口付ける。

口を離して、驚いた。

「…きみ…は?」

青年が、目を開けていた。

いけない。
人間と話をすることは
許されない。

戻らなければ。

青年と、一度だけ目を合わせて、言葉ではなく、ただ、微笑んだ。


そして、私は海に帰った。