side・希彩
――――――凱那さんが、泣いている。
あの気丈で強い凱那さんが、泣いている。
「・・・・・と、きな・・・さん・・・・・?」
その瞬間、頭から血の気がざあっと引いていくように感じた。
先程まで心を占めていた、激しい嫉妬や焦燥も一気に冷えて
改めて、自分が何をしてしまったのか気づいた。
細く白い腕を頭上で掴みあげ
儚げな体を壁に押し付け
――――そして、嗚咽を堪えながら泣いている彼女。
・・・・・・・・・・僕は一体何をしてるんだ?
誰よりも何よりも大切にしたかった彼女を、感情に任せて泣かせてしまった。
なんて事をしてしまったんだ。
「・・・・・・・あ・・・・・・」
激しい嫉妬や焦燥なんて、もう消えていて
代わりに占めているのは
強い後悔と不安
どうしよう、どうしよう。
凱那さんはきっと、夢咲から僕らの過去を聞いてしまった。
―――凱那さんが離れていってしまう。
僕の一番恐れていたことが
死よりも恐れていたことが
現実になってしまう。
それは、それだけは嫌だ。
凱那さんがいなくなるなんて、考えるだけでも死にそうなのに。
過去が知られてしまった事による言い知れぬ恐怖と、凱那さんが夢咲と一緒にいたという気が狂いそうな程の嫉妬で、自分を見失ってしまっていた。
凱那さんに、知られたくなかった過去。
いつか、真実を話すべきだとは頭では重々承知している。
だけど、その全てを話すと僕の手の中から、せっかく捕まえた凱那さんが逃げてしまう。
それがどうしようもなく怖かった。
もう二度と、大切な人を失いたくない。
二回、失った。
一回目は母で、二回目は――――・・・・・
・・・・諦めようと思った。
だけど諦められなかった。
彼女だけはもう一度・・・・・・・いや、何度でも捕まえていたい。
それなのに、何故・・・・・!!
