「・・・・・凱那さん。」
すると、漸く希彩が口を開いた。
「・・・・・どうして、夢咲と一緒にいたんですか?」
やっぱり・・・・・・
思った通りの言葉がかけられる。
「・・・・・ごめん、なさい・・・・・・・。夢咲とは本当に何も・・・・・・・。」
その瞬間、す、と希彩の目が細められた。
「・・・・・・・・夢咲?呼び方が変わってませんか?」
「あ・・・・・!」
馬鹿・・・!!
慌てて口をつぐむが、時既に遅し。
希彩は冷たい目で、私を見つめた。
「・・・・・・夢咲から、聞いたんでしょう。」
しかしふと、希彩の目に悲しげな色が映る。
「え・・・・・・?」
何の事・・・・・・
「・・・・・・・あ・・・・・。」
そこで、思い当たることを見つけた私は思わず声を漏らした。
希彩はそれを肯定と捉えたのか、
「やっぱり・・・・・」
と、呟くと
「・・・えっ・・・!?」
いきなり、私の腕を頭上で一纏めにして顎を掴まれる。
無理矢理上を向かされると、困惑と焦燥の入り交じった希彩の瞳と目が合った。
「・・・・・もう、遅いんです。僕は・・・・・もう、貴女を手放せない距離まで入ってしまった。」
「き、希彩・・・・?なに、やだ・・・・!」
逃れようと必死に身を捩るが、希彩の力に敵うわけもなく全く動かない。
どうしよう
希彩が、分からない。
こんなの、希彩じゃない。
早まる鼓動を耳元で聞きながら、ただ目の前の男を見る。
こんな希彩、知らない。
希彩じゃないよ。
全く知らない感覚に、のまれそうだ。
初めて見た、男の顔。
そうだ。希彩は男で、私よりもうんと力が強い。
何でそんな当たり前の事に気づけなかったのか。
・・・・・・それは、ずっと希彩が私に対してこんな事をしたことがなかったからだ。
いつだって優しく微笑んで
私を大切にしてくれた希彩。
それはどれだけ忍耐力が必要だっただろう。
そこで私は初めて気づいた。
希彩は、それだけ私を想っていてくれたんだ。
