病み系男子



「はい、凱那さん。」


「っ!?」


す、と急に視界が黒に覆われて思わず大きく肩を震わせた。


「・・・・・・・兄貴。」


静かに呟かれた言葉が、見えない視界の中で響く。

・・・・・・・・・・あに、き?


と言うことは・・・・・・・・





「・・・・・き、いろ・・・・・?」


「・・・・・凱那さん。」



ゆっくりと、瞼の上に被せられた手に私の手をのせる。
そして下へと下げていくと、抗うことなく視界が開けてきて



「・・・・・・・・・・・・・・希彩。」


「・・・・・・はい。」


開けた視界に、悲し気に微笑む希彩がいた。

柔らかな薄茶色の瞳が揺れながら、私を真っ直ぐに捉えて離さない。



「・・・希彩、希彩・・・・・!」


心がふっと安堵するのを感じた。


でも・・・・希彩が・・・・


「・・・・・・どうして・・・ここに・・・・!?」


「・・・・・・帰りましょう。・・・・・・夢咲。」


希彩は私の問いには答えず、ただ曖昧に微笑むだけ。
そして、夢咲には冷たい視線を滑らせた。

夢咲も、希彩と同じ憎悪を露にした目で睨んでいる。


「・・・・・・・・チッ。俺は凱那さんに用があったんで、あんたには会いたくなかったんだ。帰るよ。」


「・・・・・・・・ああ。」


殺気に満ちた二人を交互に見る。
ピリピリと肌でも感じるくらいだ。

「・・・・・希彩。」


いつも穏やかな希彩だから、その雰囲気が異質なように感じて気圧される。
堪らず絞り出した声は少し震えてしまっていた。


「あ・・・・すみません、凱那さん。もう出ましょうか。」


私が怖がっていると気づいたのか、希彩は刺々しい雰囲気を引っ込めて、いつものように優しく微笑んだ。
そして私を包むように、私の肩を抱いて店を出ようと促す。

それにつられて、私達は店を出た。