「・・・・・・後で絶対消してやるから。」


「駄目ですよぉ~。」


何が駄目よ。語尾伸ばすとか腹立つなこいつ。

しかもそれが許されるくらいのイケメンだから更に倍腹立つ。

希彩を睨んで眼鏡を外した。


「・・・・・それにしても、本当にそっくりだよね。夢咲くんと希彩。」


「・・・・・ええ、まあ・・・・よく言われます。」


「私も、見た目だけなら絶対分かんなかった。」

「・・・・・見た目だけなら?」

私の言葉に違和感を覚えた希彩が繰り返す。

「うん。最初は希彩だ~って思ったんだけど、よく分かんないけど何かが違うって感じたの。」

「・・・・・そ、う、ですか・・・・。」

濁した口調になった希彩を見ると、耳がとても赤くなっていた。

・・・・・・・・照れて、る・・・のか?

何故に?



首をかしげていると、希彩の声が少し冷えたものに変わる。



「・・・・・・・夢咲に何かされましたか?」


「・・・・・・何もされてないよ。」


「本当ですか?小さなことでも何でも言ってくださって良いんですよ。」


「本当。ただ希彩の弟ですって言われただけ。」


「・・・・・・・。」


まだ難しい顔をして黙り込んでしまう希彩に


「うん、大丈夫だから。」


と、言うと希彩の横顔が安心したように綻んだ。

「・・・・はい。」


その顔を見たら、私もほっとする。

軽く息を吐き出して、柔らかいシートに背を預け、重力に従うように瞼を下ろした。