振り返った希彩の目の前に眼鏡を突きだした。

「・・・・・・・あ・・・・。」


それを見た瞬間、希彩が顔をしかめる。


「・・・・・・・あいつ、殺す。」
ぼそりと何かを呟いた気がしたけど


「?何か言った?」


「あ、いいえ。」


にっこりと優しく微笑んで、首を振った。


「・・・・・それ、夢咲が?」


「うん。兄貴に返しといてって。てか、希彩眼鏡かけるんだ。」


「まあ、仕事場では大抵眼鏡ですね。」


そこで私はさっきの夢咲くんを思い出す。

眼鏡をつけてる夢咲くん、結構色気があって格好良かったんだよね・・・・。

希彩と同じ顔だから、希彩も・・・・・・


「・・・・ね、希彩。かけてよ眼鏡。」


身を乗り出して、希彩に眼鏡をずい、と押し付ける。

「と、とと、凱那さん!?か、か、顔がちか、ち、近いです!」

希彩は目を見開いて頬を染めると、慌てて顔の前に手で壁を作った。


「・・・・何でよ、つけてよ。」

「いいい、今は、あの、ぼ、僕コンタクトなんで・・・・!」


・・・・・成る程。それなら仕方ない。

ちょっと残念だが黙って座り直した。

するとその時信号は青に変わり、車が動き出す。

見たかったなぁ・・・・・


そう思いながら、何となく希彩の眼鏡をかけてみた。


カシャッ



「・・・・・・・何してんの。」



「あ、・・・つい・・・。」


ハンドルを片手で操作しながら、もう片方の手で携帯のカメラをこちらに向けている。


「何がつい、よ!それ貸して!消す!」


「え、わ、だ、駄目です!こ、これは凱那さんでも駄目です!」


「撮ったの私じゃない!それただの盗撮!」