~side・希彩~



「――――あった・・・・!」


観客席の下に置いておいたものを抱え上げる。

ポケットからマイクを取り出して、その機械のコードに繋いだ。

ボタンを操作しながら、イヤホンを耳につけて確認。

『――ザザ・・・・・―――グス・・・・っう・・・・!』


イヤホンから流れてきた声に口角が上がるのを感じた。


「・・・・・・凱那さんの涙声、凄く色っぽい・・・・・。」


イヤホンを外してポケットにしまい、小型音声マイクもケースの中に入れる。


「・・・・・よし。」


早く戻ろうと踵を返した瞬間



「あれ?蓼科君、何処行っちゃったのかな?」


「見失ったね~。」



ぴたり


背後から聞こえてきた言葉に足を止めた。


「さっきまでは居たんだけどね。おかしいなぁ。」


「あ、私、さっき駐車場の前で蓼科君見たよ~。」


「え、何で駐車場?人違いじゃない?」



――――――まずい。



足元から冷えていくような感覚が襲う。



「――――あいつ・・・・・・!!!」




ギリッと歯軋りをして、勢いよく振り返ると、足が地を蹴った。