スタスタと会場裏の廊下を歩く。

人気が居ないところまで来ると、


「・・・・・・っう・・・」


面と竹刀と、籠手を置いて胴着の袖を顔に押し付けた。


やっぱり、三回戦目以降からは全国並みの子達ばっかりだった。

負けると分かってはいたけど・・・・・


「・・・・やっぱり、悔しいなぁ・・・」


後から後から涙が溢れてくる。

本当は悔しくて情けなくて、どうしようもなく激しい衝動が心の中を渦巻いているけど、必死で圧し殺してるから胸が痛い。

本当は大声で泣き叫びたい。でも、そんなみっともないことは出来ない。


嗚咽を噛み締め、また強く袖で涙を拭った。


「――――凱那、さん・・・・!?」


「っ!?」



こ、の声って・・・・・!!


「と、凱那さん?どど、ど、どうしたんですか?」


何でよりにもよってこのタイミング!?


私は、泣いているのが知られたくなくて、涙声で来るなとも言える訳がなく、近付いてくる足音にただ必死で顔を隠した。


「・・・・とき、な・・・さん・・・・?」


ぽん


肩に手を置かれる。
戸惑った声が聞こえるが、無視。

袖に顔を埋めて、ただ黙り込んだ。

大丈夫、このまま涙が止まってくれれば何とか誤魔化せる。

さっきまで居なかった希彩は、私が何で泣いてるか分かってない筈だから・・・・・





「・・・・・・凄く、格好良かったです。凱那さんは、最高に美しかったですよ。」



「・・・・・・・・・・・・は・・・?」



その言葉に、思わずポカンと顔を上げてしまった。


すると


「やっぱり・・・・泣いていらしたんですね。凱那さんは向上心の高い方だから・・・。」

「・・・・・・!!」



カアッと頬に熱が集まるのを感じる。


え・・・・


この、イケメンが希彩・・・・?



いつもの気弱な表情ではなく、優しく柔らかく綺麗に微笑んでいる希彩がいた。