―――――其処には、雨に濡れながら静かに立っている




希彩がいた。



「なっ・・・・・えぇ!?」



驚きで思わず、大声を出してしまった。

その声に、女性達や周りの人が振り返る。




・・・・・・・・やば・・・・っ




希彩は、目を見開いて私を見ていた。


しかし、その表情は徐々に柔らかく綻んでいき・・・


いつもの、笑顔をつけて・・・・・・・




「凱那さぁああぁぁん!!」


キター――――――――――!!!!!!!!



両手を広げて、飛び掛かってきた。




ああ・・・・・後ろに尻尾が見えるよ、希彩・・・・




「凱那さぁんっ!!」


「ぐえっ!」


「八時間二十三分四秒振りですね、凱那さん!貴女がいない間の時間が千秋のように感じられました。それに僕のいない間に一体どれだけの男もとい猿共の視界に凱那さんを映し凱那さんと同じ空気を味わっていたのだろうと考えるともう狂ってしまいそうです。ああ凱那さん凱那さん凱那さん凱那さん。」


「は な れ ろ !!!」


周りからの視線を痛いくらいに感じながら、ブンブン尻尾を振っている希彩の肩を押す。

狂ってしまいそう?


「もう充分狂ってるから!」

「凱那さん凱那さん凱那さん凱那さん凱那さん凱那さん凱那さん」


「聞いちゃいねえ!」


何とか希彩の腕から逃れて、距離を置いた。


「来ないでって言ったじゃん!何で来てるのよ。」


そこでようやく我に返った希彩は、わたわたと慌てて頭を下げる。


「すすす、すみません、凱那さん!ぼ、僕、あの、とんでもない無礼を!」